【事実詳細】国民年金の還付請求権問題

産経新聞に情報提供した者として、詳細をここに記す。


還付請求権と消滅時効

月々支払う国民年金保険料。多く支払い過ぎると、「過誤納金」として還付の対象となる。そして還付請求は、「還付通知書」 が自宅に到達してから2年以内に行わねばならない。これを怠ると、時効により請求権自体が消滅するのだ。

【産経新聞】2019年5月14日の記事
https://www.sankei.com/life/news/190513/lif1905130031-n1.html

産経新聞記事
2019年05月14日朝刊に掲載

問題はここからだ。

この還付通知書は書留等ではなく、普通便の封書で発送されるという。しかし誰もが知るように普通便は到達が一切保証されておらず、到達事実の確認もシステム的には不可能である。そこで年金行政(厚労省・日本年金機構)はこれまで、「通常、到達したと考えられる日」 に 「到達した」 と断定した上で、「時効は自動的に起算される」 と主張してきた。

しかし本当に到達しなかった場合、請求権者はどうすればよいのだろうか。名宛人(受取人)は発送された事実を知らないのだから、 「届かなかった」という事実も知り得ない。そして通知書が届かないのであるから、時効についてはおろか、多く払い過ぎた(過誤納付)という事実にすら気付かない。よって何らかの理由により通知書が届かなかった場合、請求権は誰にも知られることなく自動的に消滅することになる。

そもそも普通便で発送してしまうと、「到達記録」 だけでなく、「発送記録」 も残らない。ならば、たとえ還付通知書を発送しなかったとしても、年金行政はその責任を易々と回避できてしまうではないか。発送担当者がうっかり(または故意に)発送しなかったとしても、そこに責任論は発生せず、なぜか「通知書が到達した」  という事実だけは確定するというのだから、もはや理解不能である。

これならば還付請求権を秘密裏に、そして効率的に、闇から闇へと葬り去ることができる。もはや憲法第29条が認める国民の「財産権」さえも、骨抜きと言うしかない。

法律上の規定と実際

国民年金法の第95条によれば、国民年金保険料は 『国税徴収の例によつて徴収する』 と規定されているため、還付方法もまた、これに倣うことになる。この 「国税徴収の例によって」 とは、要するに税務署の業務を指す。では税務署は、どのような手順で還付通知書を発送しているのだろうか。

年金の 還付通知書 は、国税では 「更生・決定通知書」 に相当するのだが、税務署はこれを簡易書留で発送する。しかも何らかの事情で名宛人に到達しなかった場合には、簡易書留便で数回にわたり再送するそうだ。そして 「数回」 の再送にもかかわらず到達しない場合には、更に 「特定記録便」 を用いて発送し、それでも到達を確認できない場合には、最終的に税務署前に 「公示」するという。これは公示送達という法的手続きである。

このように 「国税徴収の例によって」 還付を行おうとすれば、相当の手間とコストを要するが、年金行政はこれを普通便の封書のみで片付けてきた。明らかに違法だ。

この指摘に対して、年金行政は 「確かに普通便ではあるが、還付通知書は2度発送する」、「少なくとも1通は届くはず」と釈明する。しかし、この考えが本当に妥当ならば、2通の普通便は1通の書留便の信頼性に匹敵することになろう。しかしそのようなことはあり得ないし、何より郵便事業者の主張にも反する。

違法なコストカットを行いつつ、通知書が届かなかった場合、その不利益はすべて請求権者(国民)に負担させる。これが昭和40年代から変わらぬ、年金行政の姿である。

問題の規模と危険性

国民年金保険料の過誤納金は平成29年度だけで約100万件、総額約500億円。そのうち、どれだけの額が 「還付不能」 な状態のまま時効を迎え、「消滅させられた」 のか、現状では不明であるという。

発送者側に到達事実の立証が不可能である以上、消滅時効は起算し得ない。本格的な糾弾が始まれば年金行政に反論の余地はなく、すでに時効消滅したと考えられてきた無数の債権が過去40年以上を遡って一挙に復活しかねない。

また還付金は本来、『遅滞なく、金銭で還付しなければならない』(国税徴収法第56条)と規定されている。だからこの債権の復活には、遅延損害金の支払いも伴う。年金の原資が不足し、支給額がどんどん減らされるこの時代にあって、これは年金行政の存続を揺るがす大事件と言うしかない。

放置すれば国の債務は今後も膨らみ続けることになるのだから、年金行政はこの問題の解決にただちに取り組む必要がある。通知書が届くことなく、還付請求権を 「消滅させられた」 者の一人として、私はこれを世に問いたい。

M.F.

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