事象:
台湾、日本食品全て輸入停止 協議物別れ、15日から実施
産経新聞 5月14日(木)7時55分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150514-00000076-san-cn
台湾当局が原発事故後に導入した日本の食品に対する輸入規制を強化する問題で、日台双方の窓口機関による協議が行われた。しかし物別れに終わり、今月15日より日本からの食品輸入が全面停止することが確実になった。
検討:
もともと福島、茨城、栃木、群馬、千葉5県産の農水産物の輸入を拒否してきた台湾だが、今年3月に産地偽装された食品が陸揚げされたことが今回の全面停止という措置の背景にあるようだ。
日本政府は抗議しているものの、台湾の反応はむしろ当然と言ってよい。例えば中国はもっと辛辣で、上記5県のほか宮城、新潟、長野、埼玉、山形、山梨各県と東京都の12都県の作物について輸入規制を行っている。
EUも長らく計10都県産の農水産品について全面的に輸入を停止。これまでに計46ヵ国が被災地または日本産食品の輸入禁止を行い、2015年3月までに22ヵ国が輸入禁止措置を緩和したという。
一方、日本国内ではどうだろう。上記5県産の食品の流通は規制されてきただろうか。いや、ほとんどされていない。スーパーに行けば千葉産も茨城産も平然と売り場に並んでいる。
そもそも『危険はない!』と叫んできたのは日本だけではないのか。諸外国が日本の食品を敬遠したのは決して無知からではなく、そこに危険性が潜んでいるとの判断の結果である。
確かに、厚生労働省は食品中の放射性物質の新基準値を示し、不適格な作物を市場から排除してきた事実はある。しかしその基準が、本当に正常なものと言ってよいのかは極めて疑わしい。それに組織的な情報隠ぺいも枚挙にいとまがない。
例えば、福島原発の排水路から海洋に汚染水が流れていたことが発覚したのは今年、2015年2月のことだ。東京電力は事実を知りながらも、2014年4月以降は報告していなかった。これに対し福島県漁連組合長会では 「信頼関係が失われた」 などと厳しい指摘が相次いだという。
隠蔽は東電だけではない。千葉県で基準値を超える放射性ヨウ素が水道水から検出された際、行政がその事実を公表したのは検査結果が判明した2日後で、報道メディアによって広く周知されたのはさらにその5日後だった。
また原発事故当時の政府が「ただちに影響はない」と無責任な発言を繰り返したのは、いまも多くの人が記憶していることだろう。日本のお役所仕事では、危険な事実が後になってからゾロゾロと出てくる。このような状況下で『安全です!』などと断言できる人間が果たしているのだろうか
そして最もタチが悪いのは「風評被害」という言葉だ。さまざまな組織的偽装・隠蔽が介在し、後になってから「実は安全ではなかった」と分かる現実。これこそが最大の危険であり、それは決して風評ではないのだ。
方策:
一度放射能に汚染された地で生産される食品の安全性。これが明確になるのはもう少し先のことであろう。
もちろん被災地の農家や畜産家、漁業関係者に非があるわけではない。だが彼らの不運に寄り添うことと、彼らの生産品を無暗に安全だと吹聴することは明らかに話が別。国は増税してでも彼らを救うべきであろうし、同時に被災地の食品を流通させるべきではない。現状において安全と言い切れる人間がいない以上、政府は被災地作物を買い取ってでも破棄すべきではないのか。
しかし現実は違う。大臣らは被災地作物の安全性を訴えるパフォーマンスを行い、農林水産省が行ったキャンペーンは『食べて応援しよう!』、テレビタレントが「東北の野菜は買わない」と口を滑らせれば凄まじい非難を受ける。
つまり問題は隠蔽だけではないのだ。過度に「被災地」を売り込み、これに反対する意見をメディアが先頭に立って封じ込め、そして都合の悪いことは「風評被害」という印籠で攻撃する体質が問題なのだ。
家族や子供のために『被災地作物の購入を拒否する』と言っても非難されない社会。その実現のために、まず取り組むべきことは何か。
1、被災地をことさらに持ち上げることを禁止する
2、風評被害という言葉を安易に使わない
3、市場から被災地の作物を排除する、
4、被災地の生産者に対して十分な補償を行う
しかし恐らく、そのどれにも着手できない日本。高品質の日本製? 聞いて呆れるしかない。TPPへの参画を前にして、諸外国に『日本品質』への猜疑心を植え付ける愚行としか言いようがない。