事象:
「新幹線の空いてる指定席、人が来てから移動では駄目なのか」大学副学長のツイートが物議
http://blog.livedoor.jp/dqnplus/archives/1831898.html
少し前にニュースでも小さく取り上げられた話題。個人的な意見としては、この芦田宏直教授 (人間環境大学副学長・愛知県) の意見を支持したい。つまり 『JR側の認識が間違っている』 と言いたい。
検討:
海外の多くの国で、指定席券とは 「その席に座っている人を “どかせて” 自分が座る権利」 と受け止められている。つまりそこが指定席であっても、指定席券を持った人が現れなければ座っていても問題ないのだ。
しかしなぜか日本では、指定席を 「特定の人のために席を空けておくこと」 だと捉えられている。これには違和感を覚えてならない。その考え方だと、例えば指定券所持者が自由席に座ってしまえば、一人の乗客のために2席が確保される事態となってしまうではないか。
また、一人で数十枚の指定券(+乗車券)を購入すれば、1車両の座席を丸ごと貸し切り状態にすることも可能になるだろう。だから列車の座席は、一人1席というのが原則であるべきなのだ。
こんなことを言うと、なかには「(海外はどうあれ)JRは民間企業。独自にルールを決めてなにが悪い」 と思う人もいるだろう。
しかし、そもそもJRは国の認可を受けた公共交通機関。鉄道事業法にも見られるように、その使命は 『輸送の安全の確保』と『利用者の利益創造』である。
例え頑丈に作られた車両でっても、移動体である以上は着席するのが最も安全であり、空席がある限りにおいて、乗客に着席を促すのが鉄道事業者の正しい姿ではないのか。
指定席を空けておくために他の乗客が起立状態にあるのであれば、これは本末転倒と言わざるを得ない。公共交通機関である以上、安全に、かつ可能な限り多く人を効率よく運ぶのが国益に適うはずなのだ。指定券所持者が現れないにもかかわらず、「指定席は空けておくべき」 という考え方は、もはやナンセンスとしか言いようがない。
もちろん、指定席を 『空けておくべき場所』 から 『(他人を)どかせて自分が座る権利』 へと移行するのに、現状のシステムのままでは問題が残る。欧州、特にドイツ国鉄 DB などには 「どかせるための方策」 が豊富に用意されており、JR はこれらを参考にした上での利用方法の改革が不可欠となるだろう。
さて今回の教授の話を見ると、車掌は自由席への移動を求めている。他にも席はあったわけで、わざわざ指定席に座るべきではなかったのかもしれない。また副学長は切符のルールについて 「そんなこと誰でも知っている」 とも反論している。
つまり論点は “そこではない” のだ。彼の行動は 「指定席は空けておくべき」 という考え方に対するアンチテーゼ。彼は 『指定券所持者が来たら席を譲る』 とも明言しており、これは公共機関利用者の国際的なモラルに合致している。
方策:
少子高齢化を突き進む日本はいま、観光立国を目指して歩き始めている。ガラパゴス化したルールの見直しが急務なのは旅行産業であり、その筆頭こそ、主要な移動手段であるJRではないのか。
既存のルールに固執することなく、今後は彼のような反論にも耳を傾けるべきだろう。2020年の五輪を前にして今後、なにをどう改めてゆくのか。JRにはいま一度、公共交通機関としての使命について熟慮を求めたい。