考察「新聞というメディア」

朝マックwithニュースペーパー

朝マックwithニュースペーパー

事象:
今朝もいつものようにマクドナルドを訪れると、「朝マックwithニュースペーパー」というキャンペーンが行われていた。日本新聞協会が春の新聞週間にあわせ、『朝刊と親和性の高い朝食時間帯に新聞との接触を増やすこと』、『企画を通して広く世の中に話題を喚起し、若年層の無購読者対策へつなげ、新聞全体への注目を高めていくこと』などを目的として実施したものだ。

期間は2012年4月6日から同12日までの間で、47都道府県のマクドナルド各1店舗・計47店舗で実施。4月9日は休刊日の新聞が多いため実施しない。各店舗毎日先着100名を予定。朝食時間帯(午前7時~10時)に実施する。株主優待券や無料招待券での商品調達者は対象外となる。提供される新聞は店舗所在地で発行されている種類で、新聞の種類は店舗によって異なる。

配られた新聞

配られた新聞

検討:
インターネットやスマートフォンの普及につれ、新聞の売れ行きは著しく減少している。速報性という意味でネット配信に勝るものはなく、これが新聞の価値を下げた大きな要因に違いない。それにネットでは新聞各社の記事を横断検索できるうえ、さらに無料ときた。これで紙媒体の新聞が太刀打ちできるはずはないではないか。

それでも新聞を無くすわけにいかないのが配達する販売店であり、なにより(社)日本新聞協会だ。今後も新聞を存続させるには、もはや「紙媒体であるがゆえ」のメリットを活かすしかない。

このようななかで「朝刊と親和性の高い朝食時間帯」とい う今回のキャンペーンは実に面白い発想だ。 コーヒーを片手にハンバーガーをかじり、ばさっと広げた紙面に目を通す。これは小さな画面のスマートフォンにはできない芸当だ。新聞という大きな面積で活字を読む。新聞を購読しなくなった多くの人々が、この体験に新鮮さを感じたに違いない。

しかしだ、例えばこのキャンペーンで新聞を毎日受け取った人が、キャンペーン終了後に自ら新聞を買おうという気になるだろうかというと、そうではないような気がする。今後マクドナルドに新聞の販売スタンドが設置されても、購入される可能性は駅のキオスクよりはるかに低いに違いない。 例えば私が今日受け取った産経新聞は全30ページだが、この朝食時間中に読んだページはたった4ページほどに過ぎない。

せっかくもらっても、普通はそこまで気合を入れて読む時間などないだろう。さらにこのまま捨ててしまえば、なんだか資源の無駄遣いのような気にもなってくるではないか。それならばやはり、自分の欲しい記事だけを抽出できるスマートフォンのニュースで事足りてしまう、という結論に達してしまうのだ。

やる気のない「アンケートはがき」

やる気のない「アンケートはがき」

方策:
もともと新聞は手売りより、月契約で配達される形態の方が圧倒的に多かった。朝起きて朝刊に目を通し、家に帰ってまた開く。または通勤カバンに忍ばせて、電車の待ち時間や仕事の合間に読むといった人も多かったろう。なにより新聞は朝一番に届く最も早い情報源であったから、その価値も高かった。

しかしいまや月契約は激減し、多くの人がネットの記事を頼りにするようになった。このようななかでの今回のキャンペーン。「朝刊と朝食」という発想は悪くないのだが、新聞そのものが時代についてゆけていない気がしてならない。つまり配っている新聞が世相を反映することなく、従前のままの形に徹しているのがどうにもいただけないのだ。

仮に新聞を新たに購読する人が発生したとしても、その人とてネットの情報を見ることはやめないだろう。ネット社会の拡大は止まらない。ならばネット社会に生きる人々が欲しがる紙面作りを考えるべきであって、決してネットと新聞が読者を奪い合うべきものではないはずだ。

だから例えばマクドナルドで朝食の傍ら新聞を読ませようと思うなら、そのようなユーザーに合わせて紙面構成を絞り込んだ方がよいだろう。 新聞に対して速報性を望む人には、主要記事のみをまとめたAタイプの新聞を用意する。逆に速報性についてはネットに依存したいと考えている人には、ネットに掲載されない「社会面」を中心としたBタイプの紙面こそが望まれるのではないだろうか。

つまり30ページ構成の新聞を割り、『主要記事部分のみの新聞』と、『世相やトレンドのみを扱う新聞』の2つに分割して発行し、一紙の価格を本来の3分の2程度にする。両タイプの新聞を一括購入する場合に限り二紙合わせて3分の3の額、すなわち本来の額とすれば、ネット依存度の高いユーザーにも手を出しやすくなるに違いない。

読者が情報を自在に取捨選択できる世のなか。ならば新聞も、内容を選択できるようにするのが道理ではないか。なのに新聞は何も変わらない。変えようとしない。世相をいち早く伝えるべき新聞が、最も世相を軽視している姿は滑稽と言うしかない。 新聞業界は若者の活字離れを嘆く。しかし若者の質が変わってしまったのを揶揄する前に、自らの体質を変えられないことを業界は嘆くべきではないのか。

最後にもう一つ、新聞に挟まれていたアンケートはがきについて。これは今回のキャンペーンに対して意見を求めるものであるが、左端には小さなQRコードが添えられている。その横には「携帯電話からもご回答いただけます」とあったので、これに回答すべくアクセスしてみた。ところが該当のアドレス(http://www.pressnet.or.jp/2012/)にページが存在しない。今日はキャンペーンの初日で、今後このページにアクセスできるようになる、ということなのであろうか。どちらにせよ言いたい。「あんたら、本当にやる気あるのか!?」。読者目線が圧倒的に欠けている。

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